山の国 近江「山に学ぶフィールドワーク」

近江の国は山の国、滋賀県は琵琶湖を中心に山々に囲まれるという独特な地形環境があります。そして、その山々は連綿と続いてきた人々の暮らしの中で、様々な祈りや信仰を育んできました。山々の存在無くしては滋賀県の文化は無いといっても過言ではありません。本学が位置する仰木地区にも古来大切にされてきた山々があり、本学では、学生たちがその山に入って自然環境から、村の暮らし、知恵、信仰など様々な学びに繋げています。
仰木里山フィールドワークというプロジェクト授業では、仰木の集落が共同管理する山林に入り、スギ・ヒノキの人工林の現状を確認し、間伐の意味や方法を学んで、本来廃棄される間伐材の有効利用を考えるという貴重な体験をします。村の人々との交流や、みんなが協力して山を守るというコミュニティのあり方も一つの学びとなりました。後半は、写真家の今森光彦本学客員教授が所有する高島市マキノの雑木林に出向き、人と木々がともに生きる雑木林の機能を知り、そこに展開される生物多様性の実態を調査します。
また、附属近江学研究所が主催する「近江学」という授業の中では、比叡山の回峰行者の道を歩くというフィールドワークを行っています。
これは、日本仏教の母山と呼ばれ、浄土宗や浄土真宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗等の宗派を開いた高僧たちを育てた比叡山延暦寺の思想や修行を学び、実際に最大の難行といわれる千日回峰行(7年間で1000日、山野を歩くという修行)の行者道を歩くことで、修行の意義を考えます。そして、行者道の途中には、数々の古いお堂や、無数の石仏があり、阿弥陀、観音、地蔵、弁才天などの民間信仰の解説も行い、学生たちは霊山を歩きながら多くの気付きを得るのです。
このルートに加え麓の総本山三井寺を歩いた学生たちが、大学内の「キャンパスが美術館」で開催された神仏を主題とした企画展「現代の信仰とは?
わたしの神さまあなたの神さま」に作品を出品するなど、具体的な成果につながっています。
 高くそびえ、豊富な命の水を蓄えている山には古来、無限のパワーが宿ると信じられ、人々は畏敬の念をもって山に接してきました。現代社会においては、花粉症や獣害を引き起こすなど諸問題を抱えているようにも見えますが、山での学びは無尽蔵にあります。遠くにあるようで近い山々には多くの魅力が溢れているのです。

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